WOWOWで放映していた2011年の映画。監督は29歳の
ショーン・ダーキンでデビュー作とのことですが、それにしてはすごい完成度。
カルト集団から脱走して、姉夫婦の別荘に同居することになった若い女性が、なかなか洗脳が解けず、うまく現実社会に適応できない様子を描いた映画です。
映画は、姉夫婦と同居する現在の生活とカルト集団にいた過去の生活が、交互に描かれていきます。
マーサというのがエリザベス・オルセン演じる主役の本名で、
マーシー・メイというのは、カルト集団にいた頃に呼ばれていた名前です。
ですが、原題は、"
Martha Marcy May Marlene"となっていて、マーリーンとは誰だ?、と映画を観ながらずっと気になっていたのですが、後半のワンシーンだけ、マーシー・メイが電話で相手と話している時、自分のことを「マーリーン・ルイスよ」と話し相手に名乗るシーンがありました。その後、すぐに近くにいたカルト集団の男が、彼女をマーシー・メイと呼ぶので、何故、マーリーン・ルイスと名乗ったかは分からず仕舞い。
この場面とラスト・シーンのあまりにも唐突な終わり方は、この映画の謎を解くには、とても重要なのかも知れませんが、小生の頭ではちんぷんかんぷん。
公式サイトによると、エリザベス・オルセンは、ドラマ「フルハウス」のオルセン姉妹を姉に持ち・・・などと書かれていますが、何のことやらさっぱり??
有名な姉妹なんでしょうねえ。
ちなみに公式サイトには、
「ブラックスワン」のスタジオが再び仕掛ける衝撃的サスペンス!と書かれてますが、これは見なかったことにしてください(笑)。衝撃的サスペンスといったような映画では全くありません。もっと精神的な静かで深い映画です。
カルト集団のボスは、どこかで観た顔だなあ、と思って調べたら「ウインターズ・ボーン」に出ていた
ジョン・ホークスでありました。本作でも味のあるいい演技をしています。
カルト集団の描き方も、もっとギトギトと脂ぎった感じで描かれるのかと思いきや、乾いたトーンで描かれていました。映画全体の質感も淡々とした乾いた感じで、俳優達の演技も大仰さがなく、かなり好みでした。
主役のエリザベス・オルセンは、カルトの洗脳が抜けきらない女性を演じているので、無表情だったり憂鬱そうな表情も多いですが、時折見せる笑顔はとても可愛く、またボディも魅力的でした。
映画のラストは、マーサの度重なる奇異な振る舞いや言動に我慢の限界を感じた姉夫婦が、マーサを病院に連れて行くシーン。車の後部座席の真ん中に一人座るマーサ。カメラは真正面からマーサを捉え、リアガラス越しに後ろの風景も映りこみます。
姉の夫が「なんだあいつは。突然出てきた」とか何とか言いながら、一旦車を止め、再発進。
どうやら男がいきなり、道に出てきたようです。マーサを捉えたままのカメラは、リアガラスから男が車に乗るシーンを捉えています。後ろを振り返るマーサ。
その男は白いTシャツを着ています。後ろ姿だけなので、よく分かりませんが、今朝、別荘のそばの湖で泳いでいたマーサを見つめていた男に似ています。
男は車に乗り、明るいのにライトを点けて発進。もしかしてこの男、マーサの乗った車に追突するつもりでは・・・などと思っていると、突然終了。あの男はカルトのメンバーだったのか、それとも全く関係の無い赤の他人?
書きながら、ここで原題の"
Martha Marcy May Marlene"の意味について考えてみると、ワンシーンだけ、相手に名乗った、マーリーン・ルイスという名前。マーシー・メイと名乗りたくなかったので、適当に言ってみた名前だったのかな、と。
で、ラスト・シーンの車の男は、やはり、カルトの人間で、マーサを連れ戻しにやってきたのではないか、と。で、カルト集団に戻ったら今度は、マーリーンと呼ばれることになるのではないか、と妄想しました(笑)。
だから原題にはMarleneという名前も付けられているのでは無いか、と。
もし、そうであるとしたら邦題からマーリーンを抜いたことは、致命的失敗だなあ、と思わざるを得ません。
映画全体の質感もすごく好きです。だらっとした緩さが無く、ムダが無い。張り詰めた緊張感を感じます。ショーン・ダーキン監督の次作も期待します。
エリザベス・オルセンにも今後、期待大ですね。キャピキャピした、お馬鹿な恋愛映画なんかには出ないで欲しいね。
4/13(日)追記
昨夜、トイレに起きた後、しばらく寝付けなくて、ラストシーンと原題について、ふと考えました。彼女が殺されるとしたらどうだろうか、と。
後ろの車の男がカルト集団の男だとしたら、マーサが殺される理由はあるのです。
カルト集団は自給自足の生活だけではなく、金持ちの家に侵入しては、盗みを働いていました。ある時、たまたま家主に見つかり、警察に通報されるのを恐れ、彼を殺してしまい、マーシー・メイは、すごくショックを受け、悩んでいました。
それをボスがなだめたのです。正確な言葉は忘れましたが、人間は死んでも別の次元に移動するだけで、存在が無くなるわけではない、というような話だったと思う。
マーシー・メイが電話で何気なく、「マーリーン・ルイスよ」と名乗った偽名が、彼女の別次元での名前を暗示していたということか?
この妄想もありだな、というか、カルト集団はマーサが警察に通報するのを恐れているに違いないので、今はこちらの方が自分の中では優勢。
3人の名前を配した原題の意味もそう考えた方がすっきりする。現実社会のマーサ、カルト集団社会のマーシー・メイ、死後の世界のマーリーンと。