デイヴ・ホランドの新譜を早くも中古で入手できました。それほど格安ゲットという訳ではなかったけど、ホランドは自分にとっては、別格中の別格ミュージャンなので、良しとします。"Prism"というのは、アルバム・タイトルというよりもバンド名のようです。
第一印象は、すごいロックっぽいなあ、という印象でした。サックスもトロンボーンもトランペットもありません。4人のシンプルな編成です。
Personnel:
Dave Holland(b)
Kevin Eubanks(g)
Craig Taborn(Fender Rhodes,p)
Eric Harland(ds)
1曲目のケヴィン・ユーバンクス作の"The Watcher"などはもろロック。ユーバンクスのギターもギンギンです。
2曲目、ホランド作の"The Empty Chair (For Clare)"は、奥さんのクレアさんに捧げた曲みたいです。ホランドのソロも聴けますが、このアルバムでは、ホランドならではの独特なソロはあまりなく、割と普通ですね。ここでも次第に熱くなっていくギターが聴けます。でもこの曲もドラムはすごくタイト。
3曲目、クレイグ・テイボーン作の"Spirals"は、タイトル通り、螺旋的なうねうねしたテーマを持った曲調。好きなタイプの曲調です。次第にフリーな展開に。ここでは彼はピアノを弾いています。
4曲目、エリック・ハーランド作、"Choir"。イントロはハーランドのドラムスから始まり、次にテイボーンのローズが絡む。この二人だけの演奏が1分ほど続くが、そこがすごく良い。その後、テイボーンがピアノでソロ。この曲では、ユーバンクスがエフェクターを使っているのか、オルガンのような音を出していて、それが面白い。短い曲だが、非常にポップというかキャッチーというか親しみやすい曲調。
5曲目、"The Color Of Iris"は、ユーバンクス作のバラッド。ギターもゆったりとした浮遊感のあるギターを弾いています。このホランドのソロもヘンテコではなく、正統的でしっとりと弾いているのが少し残念。
6曲目、ホランド作の"A New Day"。タイトルに相応しく、爽快なテーマを持った曲。この曲はライブでも受けそうです。テイボーンはピアノを弾いています。この曲のホランドのソロは待ってました、ホランド節という感じで、ちょっと変です。
7曲目、テイボーン作の"The True Meaning Of Determination"は、ホランドのヘンテコなベース・ソロから始まり、いいなあと思いながら聴いていると、曲そのものが変なテーマをもった曲でした(笑)。テイボーンは、本作で変な曲2曲を提供していて実にいいですな。アルバム中、2番目に長い9分以上の曲。
8曲目、ユーバンクス作の"Evolution"。10分以上のアルバム中、最長の曲で、僕は本作中、最も好きな曲です。ハーランドのドラミングも炸裂。
ラストの9曲目、ハーランド作、"Breathe"は、ピアノのソロから始まります。ドラマーが書いた曲とは思えない、というかデジョネットのようにピアノも弾けるのかなあ。ECMのアルバムを思わせるような抽象的な曲調です。
それにしても今までピアノ、キーボードを入れないホランドでしたが、今回は珍しく、鍵盤楽器を入れてます、っちゅうか、お初なのでは・・・。
1983年の"Jumpin' In"以来、ホランドのリーダー・アルバムは、ほとんどが大好き。特に2000年以降の諸作はほとんど狂喜乱舞の世界だったんですが、本作はイマイチかなあ。
そう感じた理由は、やはり、鍵盤楽器が入ったこともあるのか、自由度が薄れた感じがあるのと、曲調がタイトな物が多いというのがあるんでしょうね。ホランドと言ったら変拍子の嵐なんですが、本作では、そこも弱い。そして、フェンダー・ローズやユーバンクスのギターがギンギンな事もあり、ベースラインが聴き取りづらい、ということもあるのでしょう。
今までのアルバムは、鍵盤がなく、ホーンだらけだったため、ホランドのヘンテコで強靱なぐいぐい引っ張っていく、ドライヴ感に溢れたベースラインがはっきりと聴き取れていたのです。そしてハーランドもそうですが、必ず、手数の多いど派手なドラマーを起用する。それで一層、乗れたのですが・・・。
録音の問題もあるのかなあ、明らかにベースはいつものアルバムよりオフ気味、音色もやわらかく録っている感じ。エンジニアは、あのJames Farberなのですがね。あるいは、ホランドがリーダーのバンドというより、4人が対等なバンドなのかも知れません。それはホランドの曲が、わずか2曲ということにも表れています。なので、ベースの音を意図的に目立たないようにしているのかも知れませんね。
いずれにせよ、今までの諸作があまりにも良かったので、それに比べると本作は聴き劣りする、というだけかも知れませんが・・・。
本作を入手した数日後、いつも聴いているpodcast、In the Groove Jazz & Beyondで本作のうち、"A New Day"と"Evolution"の2曲が紹介されてました。2曲選ベと言われたら僕もこの2曲です。興味がある方は
http://jazzandbeyond.podbean.com/2013/09/15/new-fusion/でどうぞ。
上原ひろみも出演したことのあるルーマニアのガラナ・ジャズ・フェスの昨年のライブ映像。カメラワークがイマイチ鈍いですが。