発売前からネット上では大きな反響だったので、Amazonで7月上旬に予約。発売日の7月下旬に届きましたが、しばらくやることが多く時間が取れず、ここ数日で一気に読みました。
孫崎氏の本は、以前、
日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書)という本も読んでいますし、ネット動画などもよく見ていて、大まかな論調は把握しているので、衝撃的な驚きというのは無かったですが、意外な発見も多くありました。
その一つとしては、重光葵、石橋湛山、芦田均らが、対米自立派だったということは知っていましたが、岸信介も対米自立派(本の中では自主派と言う言葉を使ってますが)と考えられるという解釈は意外でした。でも最も意外に感じられたのは昔は今ほど、官僚たちも対米隷属(孫崎氏は隷属ではなく、従属という言葉を使っていますが)ではなく、大蔵省にも外務省にもはっきりとアメリカに物申す人たちがいたと言うことでした。
「はじめに」という章を読んでいると、文体が非常に柔らかいな、と思ったのですが、次の「序章」でその理由が書かれてました。高校生でも読める日米関係の本を書いてほしいという出版社からの依頼だったそうです。果たして今時の高校生の何%が読むのか、希望としては3%位は読んでほしいですがね(苦笑)。
残念なのは、時代によって、かなり文章の量が違うことです。これは第7章の「9.11とイラク戦争後の世界」の中でも書かれてますが、既に依頼されていた倍の量を執筆してしまっていたとのこと。なので、1990年代以降、特に2000年以降はボリューム的に少ないです。
その中で、福田康夫首相に関しては、鈴木善幸、竹下登、橋本龍太郎と並んで、「一部抵抗派」と分類しています。理由は、アフガンへの陸上自衛隊の大規模派遣要求を拒否。破綻寸前のアメリカの住宅金融会社への巨額融資への消極姿勢、としています。ただ、孫崎氏はウィキリークスが2010年に公表した、その一連の福田vsファニーメイに関して触れてはいますが、融資を断るために辞任したと断定はしていません。
ネットでは当時、福田首相は、その住宅金融会社、ファニーメイへの融資を拒否するため、辞任した。福田はサムライだ、という賞賛の声も一部であがっていました。記者たちに向かって、「あなたたちとは違うんです。」という謎の言葉を残して辞めていったことも、あとになって、そうだったんだ、と思わせる一因にもなりました。
新聞を読まなくなって久しいのですが、この本が新聞の書評欄に載ることは間違いなくないでしょうね。
日本政府や官僚、マスゴミの対米隷属姿勢を憂える、一人でも多くの国民に読んで欲しい本です。
宮沢首相とクリントン大統領の時期に交わされた
年次改革要望書については、詳しく触れてほしかったですね。年次改革要望書については、関岡英之氏の
拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる (文春新書)という本で読んで、衝撃を受けました。これも日米関係を考える上では、避けて通れない本だと思います。