たまには芸術的な映画も観てみるか、と思い、また邦題に突っ込みを入れようという気持ちもあって観ました。1966年、ロンドンを舞台にした映画。原題は"Blow-Up"、色んな意味があるけど、この映画においては、「写真の引き伸ばし」の意味のようです。
何で、「欲望」になるのか、全く意味不明でした。アントニオーニ監督の映画は、昔、「太陽はひとりぼっち」を観たことがあるかも知れない、といった程度。
ロールス・ロイスを乗り回す、売れっ子写真家が主人公、演じるのは、
デヴィッド・ヘミングス。とにかく横柄な自信家の男なのですが、公園で見かけたカップルを盗撮し、ネガを現像し、写真を引き伸ばし、更に部分的に拡大させるうち、そのカップルを狙っている狙撃犯が草むらに映っているのを発見してしまうのです。更に死体らしき物が横たわっていることも。
実際は、ネガの特定の部分をどんどん拡大して引き伸ばしても、より情報量が増えるのか、そんなこと、ありえないだろうとは思うのですが・・・。画像も粗くなるしね。まあ、そのことは不問として、狙撃犯の姿を発見をすることで、急にシリアスになっていく写真家でした。
盗撮されたカップルの女性の方は、
ヴァネッサ・レッドグレイヴという、これまた有名な女優のようです。彼女は、盗撮されたことにすぐ気付き、ネガを返してくれないと面倒なことになる、と言い、彼のスタジオにも来ています。
拡大した写真を見ると、彼女が狙撃犯の潜む草むらの方を見ている不安そうな表情なども写っており、もしかしたら彼女はグルになって、恋人を殺そうとしていたのか、などとも想像したわけですが、サスペンス映画的な謎解きの展開は全く無いのですわ。
観る方は、全く置いて行かれて、放っておかれます。芸術してますなあ。翌日、死体を確かめるため、公園に向かいますが、既に死体はなく、そして、スタジオにあったネガや引き伸ばした写真も盗まれてしまいます。
最後は冒頭にも出てきた、車に乗りながら大騒ぎしている仮装と化粧をした若者たちが、再び現れ、公園のテニス・コートでパント・マイムのテニスをします。見ている若者たちもパント・マイムだけで無言の応援。
写真家は、苦笑しながら見ていますが、彼らはボールがコートを大きく出てしまうパントを演じます。そして、取ってきて、という催促に写真家は一瞬ためらうものの、ありもしないボールを素直に取りに行き、投げて返します。
その後も写真家は、テニスの試合を見続けますが、ボールを投げて返してからは、ボールの音も流れてきます。そして、このままテニス・コートから去っていくシーンで終わりかな、と思っていると、突然、写真家の姿は消えてしまい、芝生だけの背景に突然、"The End"の文字。
これは一体何なんだ。
ジェーン・バーキンは、当時、20歳ぐらいだったみたいですね。オール・ヌードになっちゃってます。
ヤード・バーズは、ライブハウスの演奏シーンで登場。1960年代のBBCのスタジオ・ライブの映像に映っている聴衆などを見ると、無表情の若者が体を全く動かさずに聴いている映像などが少なくないですが、本作のこのシーンもそういう若者が多く、印象的でした。アンプが、ガリガリと雑音を立てて、
ジェフ・ベックがギターをぶち壊すシーンがありました。
ファッション・モデルの当時の服や帽子、メイク。そして、マリファナ・パーティの様子など、1960年代のロンドンの風俗が見られたのも面白かった。
監督が何を表現しようとしているのか、たぶん、僕は何回観ても理解できないとは思いますが、映画自体はすごく楽しめました。映像も綺麗だし。また、音楽もブルースやジャズが良かったです。音楽は、
ハービー・ハンコックが担当とのことでした。