タイトルに惹かれて借りましたが、あまりにも悲惨なタンザニア、アフリカ最大の湖、ヴィクトリア湖周辺の人々の生活に気持ちが滅入りました。1960年代に誰かがヴィクトリア湖に放流した巨大魚、
ナイルパーチのせいで、「ダーウィンの箱庭」などと形容されたすばらしい生態系を持つヴィクトリア湖の環境が一変し、ナイルパーチの王国と化す。
切り身をヨーロッパや日本へ輸出するため、ナイルパーチの加工工場ができ、工場主達は、大儲け。ロシア人パイロット達は、毎日のように空港に降り立ち、ナイルパーチを運んでいく。中には積み過ぎて、離陸直前に墜落、炎上したり、川に突っ込んだりする飛行機も。
パイロット達を相手に一回、10ドルで体を売る娼婦達、乱暴で冷酷な男達に殴られ、時には殺される危険と隣り合わせ、ナイルパーチを詰める梱包材の発泡スチールのようなものを燃やして、そこから作った液体でシンナー遊びのような事をするストリート・チルドレン達。年長の少年から受ける暴力や性的虐待の恐怖心から逃れるためにするそうです。
ナイルパーチ工場は、衛生管理も保たれた近代的な工場らしい。しかし、そこで切り身を取られ、頭以外は、ほとんど骨のわずかな残骸と化したナイルパーチは、他の数百万のアフリカ人が食べるとのこと。トラックで運ばれ、土の上にまるで、廃棄物を捨てるように投げ出され、山積みされる。それを一尾ずつ、柵のようなものに引っかけていく女性。ナイルパーチの残骸には、ウジがたくさん湧いています。何とおぞましい光景か。これを油で炒めるか、焼くかして、地元民達は食べるそうな。その仕事をしている女性は、「前は農業をしていたけど、今の方がまし。」更に残骸が発するアンモニアガスで、大勢の人が咳き込み、片眼を失った女性も。
国立魚類研究所(?)とかいう施設で、一日1ドルで、夜警の仕事をしている男。「以前、働いていた奴は、鉈でズタズタに切られて、殺された。だから俺がこの仕事にありつけた。」「多くの人間が戦争を望んでいる。兵士は大儲けしているさ。」など驚きの言葉を次々と発しますが、かなり味のある男で、俳優になれば、いい味出せるのにな、と思ってしまいました。
ヨーロッパからは何を運んで来ているんだ、という質問には頑なに分からない、を連発するパイロット達でしたが、後半では、アンゴラに戦車のような大きいものを運んだことがある、と白状。
こういう映画やドキュメンタリー番組を観ると、日本や欧米の繁栄は、アジアやアフリカなどの犠牲の上に成り立っている。それを決して忘れてはいけないな、といつも改めて思います。
ナイルパーチが採り尽くされたら一体、どうするのでしょう。また、新たな「金を生む湖」にするため、新たな魚でも放流するのでしょうか?
尤も映画では、ヴィクトリア湖にナイルパーチを放流したのは誰か?ということに言及はしていませんが。
公式サイトもまだ、ありました。