この映画、実在の登山家、
ハインリッヒ・ハラーの伝記を基に映画化された、ということもあり、'97年頃だったか、ロードショーで観ました。今は再開発でビルもなくなっている東急文化会館にあった
渋谷パンテオンでした。
監督はあのー、
ジャン=ジャック・アノー。すいません。
当時、この映画、幼少時の
ダライ・ラマ14世に謁見した中国の将軍を、あまりにも厚顔無恥、傍若無人な振る舞いをする人物として描いたため、(実際、観ていて画面にツバを吐きたくなる)、中国は、監督やブラッド・ピットなどに対し、中国には永久に入国禁止と通達を出した、というのも話題になりました。
また観たいなあ、と思いつつ、そして数年前、ハインリッヒ・ハラーの死亡記事を読んだ時も観ようかな、と思いつつ、ようやく本日、観ることができました。
プライドがめっぽう高く、唯我独尊の孤高の登山家、オーストリア人のハラーを演じるのは、
ブラッド・ピット、彼の属するドイツの登山隊の隊長、ペーター(
デヴィッド・シューリス)、二人の相克から始まり、やがて第二次世界大戦を迎え、イギリス軍の捕虜となって、インドの収容所に囚われの身となるも、そこから脱走し、山賊に襲われたり、凍傷になったりしながらチベットを目指す過程は、実話とは思えない強烈なインパクトが残ります。
そして、やがて変装しながらラサに潜り込み、少年のダライ・ラマ14世の家庭教師のような事をしながら、徐々に素直で純粋になっていく、ハラーなのでありました。
その少年時のダライ・ラマ14世を演じた
ジャムヤン・ジャムツォ・ワンチュク、彼の好奇心に満ち溢れたクリッとした目。輝くような笑顔、こんな少年と接していれば、そりゃぁ、どんなひねくれ者も素直になりますって(笑)。素晴らしい存在感です。
ユーモアを絶やすことのない、現在のダライ・ラマ14世も実際に、こんな少年だったんだろうな、と思わせます。
映画は、中国によるチベット人の大量虐殺など政治的な側面や、ヘラーの離婚問題などシリアスな面。そして、チベット人女性の仕立屋、ペマ(
ラクパ・ツァムチョエ)と出会った時のヘラーとペーターの嬉しさを隠しきれない、ニヤニヤとした表情など(このシーンは本当に好きだなぁ)、3人でアイス・スケートに興じるシーンなど笑えるシーンも結構あるので、気楽に観て欲しい映画ですね。
ハラーが、ペマに自分の登山家としてのキャリアなどを自慢するため、新聞記事を見せるのですが、ペマに言われ、苦笑いを浮かべる場面があります。正しくは覚えてませんが、こんな言葉です。印象的でした。
「そこも私たちが西洋の世界と違うところ。あなたたちは、そういうことが英雄ともてはやされるのだろうけど、私たちは目立つことは重要ではないの。」
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