主人公は二人のおっさん。トラックに機材を積み込んで、田舎町の映画館を転々と移動する、「流しの映画技師(?)」、ブルーノ(
リューディガー・フォーグラ)。こういう職業が実際、'70年代のドイツにはあったのだろうか?
トラックを川辺に停めて、休憩中、猛スピードで、一直線に川に向かって走ってくるフォルクス・ワーゲン。そのまま、川にドボン。自殺か、と思いきや、カバンとジャケットだけを持って、岸に上がってくるロベルト(
ハンス・ツィッシュラー)。
そこから二人の珍道中、というよりものんびり、だらだらした時間が流れていきます。全く会話もなく、数時間後なのか、ようやく自己紹介をする二人。
時折、設備のメンテナンスがひどい映画館で、プロ意識、職人気質を感じさせる一面も見せるものの、基本的には、お気楽な稼業、流されるままに生きているといった雰囲気のブルーノ。
ロベルトは、妻と別れたものの、電話を見かける度にダイヤルを回し、でも話をする前に切っている感じで、毅然としていない。途中、ブルーノと別れ、父を訪ねるのですが、かなりの確執がある様子。
その後、ブルーノは、ロベルトと共に生家を訪ねるのですが、見るも無惨な廃墟と化していて・・・。
3時間という長さのため、途中で飽きるかな、と思いましたが、意外にも独特なテンポと、ブルーノの飄々としたところとロベルトの神経質なところの対比、あとは音楽がよかったところ、モノクロ映像のかっこよさ等のためか、飽きることなく、観られた。
監督の映画に対する思いが、登場人物達の言葉を通して語られているような気がしました。
後半、二人は互いの本音に迫るような発言をし、少し、取っ組み合いになったりもしますが、翌朝、「変化することは必然だ」と書き置きを残し、去っていくロベルト。
ロベルトは電車に乗って、どこかに向かいますが、空いているにもかかわらず、ボックス席の進行方向とは逆に座っています。これは相変わらず、過去を引きずろうとしている彼の性格の暗喩なのか?
一方、ブルーノは、とある映画館の女性支配人の、最近の映画に対する絶望的な思いを聞き、今後の巡回予定表を破ってしまう。
原題は、
IM LAUF DER ZEITということですが、僕はドイツ語はちんぷんかんぷんです。アメリカでは、
KING OF THE ROADというタイトルらしいですが、邦題の「さすらい」が最高に好きですね。邦題の方が好き、と感じるのは極めて珍しいことで、奇跡に近いことですね(笑)。