昨日の記事でもちらっと書いた、1990年の映画。トニー・ガトリフ監督の映画では、初めて日本でロードショー公開された作品だそうです。原題は、"Gaspard et Robinson"(ガスパールとロバンソン)。
冒頭、一組の夫婦が、睡眠薬で眠らせた老婆を海岸に置き去りにする衝撃的なシーン。「名はジャンヌ。無一文です。よろしく。」と書かれたメモを胸に貼り付けて・・・。
このジャンヌ役の
シュザンヌ・フロンですが、元々は、エディット・ピアフのマネージャーだったそうです。ジョン・ヒューストンの「赤い風車」、「審判」などにも出演し、ヒューストン監督は、彼女と結婚しなかったことを死ぬまで後悔していたという逸話もあるそう。
彼女の演技のボケ具合も最高。また、可愛らしさも魅力的です。
たまたま、置き去りにされたジャンヌを発見したのが、ロバンソン(
ヴァンサン・ランドン)。ロバンソンは、子供の頃、母親に捨てられた過去を持ち、かわいそうな人を放ってはおけない性分。で、ガスパール(
ジェラール・ダルモン)と二人で住む改修した廃屋に同居させることに。
ガスパールは妻のジーナが家出をしてから家族というものとは縁を切り、自由に生きたいと願うので、反発が起こります。でも結局は渋々ながらも承諾。
このガスパールが、一見マッチョで渋い、セクシーなチョイ悪おやじ風なのですが、酒が入ると海岸で、妻との思い出の曲、ウォーカー・ブラザーズの"In the Room"のレコードをかけながら「ジーナ!!」と叫びながら泣きわめく、その外見とのギャップが笑えます。
廃屋をレストランに改修して、金を稼ぐことを夢見る二人。夜はといえば、元、錠前屋勤務という腕を活かして、金持ちの家に侵入し、クスクス笑い転げながらうまい物をたらふく食べ、酒を飲み、食料を盗みまくる。
途中まで観てきて、この風景、どこかで見たことが・・・と思い出した映画が、
「ベティブルー 愛と激情の日々」です。ストーリーは全く違いますが、あの映画も海辺の家が舞台で、壁を塗り替えるシーンなども出てきました。実は、撮影した場所も同じ、南仏プロヴァンス地方のカマルグという、湿地のデルタ地帯とのこと。しかも二人とも「ベティブルー 愛と激情の日々」に出演しており、実生活でも親友だそうです。
ある日、たまたま見つけた、貧困にあえぐ美しい未亡人とその幼い娘、その未亡人ローズ役の
ベネディクト・ロワイアンは、シャネルやコム・デ・ギャルソンなどのショーにも出演したトップモデルだそうです。
結局、この母娘も招き入れることになってしまうのですが、そこで、ガスパールはメモを残し、一人、立ち去ってしまいます。途中、どこからか現れた一匹のみすぼらしい犬、追い払おうとするもずっと付いてくるので、あきらめ、新たな連れができ、これからどこに向かうのか、ガスパール。
軽い笑いと弱い者に向けられる優しい視線が感じられる映画。ガトリフ監督の映画では、
モンド ~海をみたことがなかった少年~にどことなくタッチが似ているかなあ、と。ミシェル・ルグランの音楽も良かったです。