World Music系の記事は女性の、しかも綺麗どころばかり続いたので、男性を。先日急死したばかりで、残念でならない
アンディ・パラシオの昨年のアルバムについて書きます。来日して欲しかったな。
本作で初めて知ったのですが、この人は中米の小国、ベリーズで人気のある
プンタ・ロックという音楽の最大のスターで、'95年リリースの
Keimoun(Beat On)というアルバムで有名とのこと。
Keimoun(Beat On)はこちらで全曲聴けます。
バンド名に入っている
Garifunaとは、アフリカから連れてこられた黒人奴隷達と、元々、南米に住んでいたカリブ族との混血の人達だそうです。ガリフナ人については、
ガリフナ族@ベリーズあたりが参考になるかと。
打楽器が印象的で、ピアノなどキーボード類の入った曲は少ないのですが、ガリフナ音楽の原型なのかな、と感じる曲が、9曲目の"Yagane(My Canoe)"です。こういう曲が1曲入っていることで、他の曲の持つ現代性との繋がりが感じられ、音楽的にも拡がりを持たせ、非常にいいですね。
他の曲は、アルバム全体通して、繊細だったり、歯切れが良かったりするアコギと、ゆったりと軽いエレキの絶妙なバランスのせいか、なかなか洗練されたサウンドに感じます。とにかく、ギターが最高です。
もっともこのあたりの土着か洗練かといった感覚は、普段、打楽器が強調されている音楽をよく聴いているか、聴いていないかにより、相当な隔たりがある、というのは自らの体験上、よく知っています(苦笑)。僕は打楽器だけの音楽もよく聴くので、その辺りの感覚は完全に麻痺しています(笑)。
しかし、ソカやズークなどカリブの音楽には決して少なくない、薄っぺらい使い方のシンセや明るすぎて、ただ軽佻浮薄としか感じられない音楽、そういった要素は微塵も感じられません。
カリスマ性を感じさせる彼の声質、そして老若問わず、ガリフナ音楽のオール・スター参加(グアテマラ、ホンジュラスなどからも参加)ということもあるのか、風格と重みを感じさせる音楽になっています。"Baba(Father)"の男性だけのコーラスや"Ayo Da (Goodbye My Dear)"を歌う老人、ポール・ナボールの歌声等は本当に素晴らしいです。
"Beiba(Go Away)"などは、セネガルで使われるサバール(片手は素手、もう一つの手は木の枝を持って叩く)のような音色の打楽器が使われており、この曲もかなり好き。万人受けしそうなのは、タイトル曲の"Watina(I Called Out)"でしょう。ベース・ラインなどはレゲエ調で、哀愁のあるメロディ。「哀愁」は、このアルバムのKey Wordのひとつでありますね。
伝統的な宗教儀式で使われるリズムを用いたという"Weyu Larigi Weyu (Day by Day)"は、独特のビビリ音を発する太鼓も含め、興味をそそられました。全曲、感想を書いてると恐ろしく長くなってしまうので、だいぶ前にも書きましたが、僕も会員になっている
Calabash Musicで全曲、1分だけですが、聴けます。
フル・ヴァージョンだと、
5曲聴けるのが、ここです。
伝統音楽と現代音楽が、うまくミックスされ、ベリーズの音楽の素晴らしさを教えてくれたパラシオとこのアルバムに感謝&合掌。ミックスとは軽いな、もっと結合の度合が強いです。化合され、という言葉を使いましょう。