敬老の日、急に仕事が前日で一区切り付いたので、行ってきました。中央本線の笹子駅の次、甲斐大和駅で下車。降りた登山者は、僕一人。他に降りたのは、若い女性一人。昔は初鹿野(はじかの)駅という名前でした。
景徳院を過ぎ、しばらく歩いた
茶湯(ちゃとう)山荘という山小屋の手前の曲り沢林道を入る。
林道終点の広場の先にも、まだ堰堤があるのが見えたので、すぐには沢に入らず、しばらく沢から離れる感じの山道を行く。10分位歩いたところで、沢に降りる。
10:30遡行開始。ガイトブックには、基本装備のみ、ということだったので、今日はザイル、ハーネス、ヘルメットも持ってきていない。ついでにヘッドランプも忘れてしまった。
食料も甲斐大和駅の近くで買った、いなり寿司とおにぎりのみ。これを行動食にして、遡行前にラーメンと餅を食えば良かった、と後になって後悔した。最後は腹が減って、つらかったけど、水も少なく、ラーメンを作れなかった。
沢自体は、スケール感は無いものの、ナメ滝は結構多く、日が差せば、沢水のきらめきと、広葉樹の緑が美しいだろうなあ、と想像できる。しかし、簡単な沢と油断し、地形図もろくに見ずに歩いてしまったためか、どうやら最後、予定していたのとは違うところを詰めてしまったようです。
何とガイドブックには全く載っていなかった、10メートル以上の垂直の滝が出てきました。左壁から取り付き、途中から水流の流れる真ん中を通って、右壁にトラバース、そのまま右壁を直上し、何とかクリアー。
しばらく行くと、更に20メートルぐらいあろうか、という細かいホールドの滝。水流あたりがホールドは細かいものの、登れそうだと思うが、上部がよく見えない。取りあえず、左壁から取り付くと、何と固定ロープが・・・。
といっても頼りない6mmシュリンゲが長ーく、垂れ下がっているだけ。力をかけてみるとどこに結んであるのかは、見えませんでしたが、意外にもしっかりしている。念のため、左手のひらに、ぐるぐると2,3重に巻き、負荷をかけないように、すぐ右側を流れる細い水流に沿って登ります。予想通り、ホールドは細かいけど、岩はしっかりしていて、無事、登りました。グレードとしては、3級上程度でしょうか?
しかし、ヘルメットも無かったので、緊張しました。更に行くと、今度は、沢を大きな丸い岩が、ラムネのビー玉のように行く手を塞いでいます。近くまで行くもやはり、猫ぐらいしか通れないスペース。
しかも両岸とも岸壁で覆われ、巻くこともできないので、仕方なく、さっき登った滝を降りることに・・・。
少しでも藪漕ぎを減らそうと、なるべく高い位置まで、沢筋を詰めようと思ったのが、裏目に出ました。結局、2本の滝の少し前にあった、右岸側の落ち葉でふわふわになった窪みを登ります。
かなりの急登でしたが、せいぜい熊笹の藪を漕ぐぐらいで、山道に出ました。ここで、これは作業道だな、登山道ではないな、と、最後の詰めを間違えたことが、はっきり分かりました。
右に行けば、登り、左に行けば下り、もう迷わず、下りを選ぶ(笑)。そして、不明瞭で、ルートファインディングが必要な山道を延々下り、最後は、曲り沢林道の少し上の、大和村なんとかセンター、というところに降りました。
「誰でも温泉入れます」という看板に、喜び勇んで、近寄りますが、なんと閉まっていました。近くを通りかかったおばはんに尋ねると、16:30までとのこと。
早すぎるぜ!!
しかし、今回、こんな初級クラスの沢で、詰めを間違ったことに少なからずショックを受けました。でもそのおかげで、登りがいのある滝を2本、(この沢初の滝らしい滝)登れたこと、そして、そのために滝の登攀技術の勘が少しばかり戻ったこと。そして、登山道でなく、山道を歩いたことで、ルートファインディングも楽しめた、ということで、まあ、良しとします。
下山に使った山道は、1/25000地形図の曲り沢の北側の、1,379m、1,199m、956mを結ぶ尾根だと思います。
それにしても途中、「ウーウワーッ、グフーッ」という雄叫びと共に失踪する獣の物音を聞きましたが、あれは猪だったのだろうか、こちらに向かってこないで本当に良かった。
(追記)その後、あの地獄の底からこだまするような恐ろしい声は、熊以外にありえない、と思いました。
その近くで、猿の声と思しき声も聞こえました。猿は、凶暴だから絶対、出会い頭には、会いたくないですよ。