舞台はメキシコ・シティー。いきなりカーチェイスの派手なシーンで、あ、こりゃ、くだらんアクション物、借りちゃったかなぁ、と思ったが、やがて、場面が変わり、何故、ああいうカーチェイスになったのか、という過去に戻るストーリーに。そして、最初の場面に戻ったのは50分ぐらい経ってからだったか?
話は3章からなっているが、最初は、自分の愛犬が、実は強い、ということを偶然知った青年(
ガエル・ガルシア・ベルナル)が、闘犬でがっぽがっぽ稼ぎ、兄から暴力をふるわれている兄の嫁と駆け落ちしたい、という欲望がうずまく話。
闘犬をきっかけに、少年ぽい表情からギラギラした男の表情に豹変するところが、なかなか凄みを感じさせる。その1章からしばしば画面に登場する、リヤカーを引き、犬を連れた謎の老人。ぼさぼさの髪と髭の中に潜む鋭い眼光が、ただ者ではない雰囲気、強烈な存在感を漂わせる。
2章目は、スペインからやったきたモデルという設定で、実際もスペインの女優らしい、
ゴア・トレドと不倫相手の男の話。この章は、かなりシリアスで重かったなあ。
3章目は、いよいよ謎の老人が主役。エル・チーボ(
エミリオ・エチェバリア)の過去も明かされる。そして、ある男の殺しを依頼されるのだが・・・。この章も男と女の話だが、ここでは、エル・チーボと、彼の娘。娘は、母から父は死んでいると聞かされている。
久しぶりにパワーのある映画を観たな、といった感じ。監督の
アレハンドロ・ゴンサレス・イニリャトゥの初作品だそうだけど、今後、この監督の映画、観てみよう、と思ったら「バベル」の監督なんですね。2時間30分もあり、自分にとっては、大抵の場合、少々長いな、と感じるはずだが、そう長くは感じなかった。
とにかく、エミリオ・エチェバリアの存在感に圧倒されました。女性の多くは、ガエル・ガルシア・ベルナルに惹かれるんでしょうけどね。