1972年のヴェンダースの初の長編映画、という説と2作目の長編という説とあるのですが、とにかく彼の初期の作品。
それにしてもかなり、ちんぷんかんぷんな映画でした。元々、「ベルリン・天使の詩」の脚本も書いている、という
ペーター・ハントケとかいう人の前衛小説を映像化した作品だそうで、これは小説を読む前に観てはいけない映画だったかもしれません。「不安:ペナルティキックを受けるゴールキーパーの」(三修社 1971年)(羽白幸雄訳)という本があるようです。
映画は、審判の判定に抗議し、退場になってしまったゴール・キーパーの主人公が、ぶらぶらと当てもなく、映画館に行ったり、酒場で酒を飲んだり(で、何故か、必ずジューク・ボックスで曲を聴く)、ナンパしたり。
で、映画館の窓口で、チケット売りをしていた女性を殺してしまい、(これも何故、急にキレて殺してしまうのか、カミュの「異邦人」を上回る不条理さなのだが。ちなみに「異邦人」は大好きなんですけど)、それでも逃亡する、という展開にはならず、昔の恋人(?)がやっている田舎の酒場を訪ねる。
出会う人との会話では、彼はプロのサッカー選手で、南米遠征もした、などど宣うのだが、あれは大嘘でしょう(笑)。冒頭の試合のシーンでは、どうみてもアマチュアがプレイするグラウンドだったし。殺された映画館の窓口嬢との会話でも「リオ」という言葉にリオ・デ・ジャネイロとはすぐに気づかなかったり、「プロなの?」という質問にも口を濁したりしていたから。
さて、その昔の恋人のやっている酒場近くのホテルに泊まったのですが、ある朝、そこで働く娘の見ていた新聞を取り上げると(ジューク・ボックス、新聞、映画に固執している主人公なのです)、そこには自分の似顔絵が・・・。
娘は「もう、変装してるわよね。」などと言っているが、疑いを隠せない様子。外出し、新聞を買い、「窓口嬢殺人事件に新たな証拠」という見出しに釘付けになる主人公。
結局、捕まるのかな、と思いきや、少年サッカーの試合を観に行き、隣に座っている男に話しかけ、「ボールより、キーパーの動きを見なければだめだ。」等とうんちくを垂れるのです。隣の男は「キーパーの動きばかりは見ていられない。」
PKの場面になると、「キーパーがいかに相手の裏をかくか、相手も同じだ、永久に続く。」などと己の哲学を語るのです。
まあ、そんな会話の中、終わってしまう。
「あんた、本当は、早く捕まって楽になりたいんか?」とか、「これも一つのゲームとして、楽しんでるんか?」などと思うことしかできない映画でした。
サッカー映画だと思って観ると、痛い目に遭いますぜ。
このパッケージは、詐欺だろ(笑)。